1. はじめに
革製品や木材製品など、モノを使用していく中で、「なじんだな」といった印象を抱くことがある。野球少年だった著者にとっては、グローブがまさにそうであった。新品のグローブほど心が躍るモノはなかったが、新品の状態ではまだ硬く、思い通りに捕球ができないこともあった。しかし、使い込んでいくうちに段々と使い心地が良くなり、いつしかグローブは自分にとって身近で、なくてはならないモノになっていった。このように、グローブが私の手に、私自身に「なじんで」いったのである。
ここで、「なじむ」という言葉を考えると、手になじむ、靴がなじむ、職場になじむ、なじみの客、幼なじみなど、私たちの世界には実に多様な「なじむ」が存在することに気付く。果たしてこれは偶然か、必然か、本研究では、多様な「なじむ」の中で、特に、「ヒト」と「モノ」との関係性における「なじむ」に着目し、その価値を見出していく。



